岐阜地方裁判所 事件番号不詳 決定
主文
本件勾留の執行を当分の間停止する。
理由
一、本件被告人が昭和四五年一〇月一八日強盗の被疑事実で岐阜中警察署留置場に勾留され、同月二四日右と同一事実を公訴事実として公訴を提起され(昭和四五年(わ)第二八七号)、今日に至るまで右同所に勾留されていることは一件記録によって明らかである。
二、そもそも勾留がその基礎となっている事実の処理に必要な範囲でなされることは令状主義の当然の帰結であって、その事実の処理に無関係な場所に勾留することや、またその事実の処理にとって不必要に長期にわたって勾留することは許されてならないのである。
この理は余罪捜査の場合も同じであって、勾留中の被告人に余罪があるとき、任意捜査としてその被告人(被疑者)を取調べること等は禁じられていないけれども、その場合でも、そのために勾留期間が延長、更新されて長期化したり、勾留の基礎となっている事実の処理にとって必要でなかったりあるいは不相当な場所に勾留したりすることは許されないものというべく、そういった必要のある場合にはまさにその余罪について逮捕状、勾留状の発付を得た上で、その定められた制約に従って捜査をしなければならない。
三、実際問題としても、右のように解さなければ、余罪については被疑者を令状なくして拘束することができることになり(余罪について証拠がなくても事実上逮捕勾留できる)、しかも余罪について令状の発付を得た場合に課せられる時間や期間の制限には服さないですむ等、令状主義上ゆゆしい結果を生むこととなり、不当きわまりない。
四、これを本件についてみるに、一件記録(検察官の意見に添付された捜査報告書二通を含む)によって明らかなように、本件勾留の基礎となっている事実を公訴事実として昭和四五年一〇月二四日に公訴提起された本件被告事件は、同年一一月二五日に第一回公判が開かれ、被告人が事実を認め、これについて検察官提出の証拠の取調も一応全部すんだその段階で追起訴予定の余罪捜査のために続行となって、次回公判期日が昭和四六年一月二七日と定められており、被告人については神奈川県下等に多数の余罪があることでもあり、右のように公訴提起されてすでに四〇日をたち、審理も進行している段階で、勾留場所は当然拘置所でなければならないのに、本件被告人がいまだに岐阜中警察署留置場に勾留されていることをもあわせ考えてみると、この段階において本件勾留は勾留の基礎となっている事実の処理のために必要な範囲を越え、もっぱら余罪捜査のために利用されていることが明らかである。
五、以上によれば本件勾留は、現段階においてこれを継続すべきではないので、余罪捜査が終了し、被告人が余罪捜査にわずらわされることなく、被告事件の防禦に専念することができる時期まで、その執行を停止することとし、刑事訴訟法九五条により(なお、被告人は余罪で拘束されることが予想されるので委託、住居制限はしない。)主文のとおり決定する。
(裁判官 安倍晴彦)